日々想うの事
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
更新ないのに足を運んでいただいてるのがいつも何か申し訳ないなーと思っておりまして、何かないかなーと思いごみ箱から拾い上げてきました。没にした高杉と仔桂ギャグ編のさわりの部分です。何てことない書きものなので、お暇な方のみどうぞ。
いつものように突然訪れたその家屋は、明かりが点いておらず人の気配がしない。
(・・・・・・ヅラの奴、まだ帰ってねェのかよ・・・)
内心舌打ちをしつつ、一応試しに戸に手をかけてみる。すると古びた戸は存外無抵抗に開いた。
用心深い桂が鍵をかけないまま隠れ家を留守にすることはまずないと言っていい。嫌な予感が脳裏を掠め、高杉は自らの気配を断ってゆっくりと古い家屋の中へ進んでいった。
(誰も・・・いねェのか?)
神経を研ぎ澄ましつつ、部屋を一つずつ確かめていく。中は特に乱れた様子はなく、前に訪れたときと同じ空気が漂っている。隠れ家を移ったというわけでもないようだ。
(何かあったわけじゃねェらしいが・・・)
僅かに安堵を覚えつつも、だが違和感が拭えない。
次の瞬間、高杉は素早く抜刀し部屋の奥へとその切っ先を向けた。
「誰だ、出てきやがれ」
刃の先に感じる、微かな人の気配。しかしその気配は動く様子がない。
躊躇わずに灯りを点けた次の瞬間、高杉は自らの目を疑った。
「・・・・・・何だ、コイツ?」
そこにいたのは、ぶかぶかの着物の中に埋もれるようにうつ伏せに横たわっている一人の仔供。
ひどく無防備なその存在に、こんなものに警戒したのかと馬鹿馬鹿しくなり、高杉はつかつかと近づき仔供の頭をつま先で小突いた。
「オイ、起きろ」
「・・・ん・・・」
乱暴な起こされ方をされ、仔供はうっすらとその目を開けた。手で目をこしこしとこすり、くぁ、と小さくあくびをする。どこかで見た顔だな、と思いながら、高杉はくいとその小さな顎を掴んだ。
「何だ、てめェは・・・?ヅラはどこに行った」
「はなせ、ぶれいもの!なんだじゃないづらでもない、かつらだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、あァァ?」
たっぷり数十秒の間をおいて、高杉は仔供の顔をまじまじと見返した。
ひどく見覚えのある、端正で小生意気な、この上なく愛らしいその顔立ち。黒く凛とした眼差し。
「・・・まさかとは思うが、てめェ・・・・・・ヅラってことは、ねェよな」
「づらじゃないかつらだ。きさまなにものだ、名をなのれ」
大きな着物を引きずるように調え、仔供は居住まいを正して高杉に向き直った。10歳かそこらの容姿とは裏腹に、随分と高飛車な物言いをする。ということは、つまり。
「てめェ・・・マジでか。マジで、ヅラか」
「づらじゃない、かつらだといっている!」
舌足らずな声で抗議してくるその口調は、まさしく桂のものだ。
しばしその姿を見つめた後、高杉は大きく息を吐いた。どういう事情かは分からないが、物怖じのない真っ直ぐな視線を向けてくるこの仔供は、どうやら桂に違いないらしい。
「名を名乗れと言ったが・・・てめェこそ随分な礼儀じゃねェか。俺の顔を見忘れたか?」
いくばくか余裕を取り戻し、ゆったりと膝を立てて座りながらからかい半分に問い返す。すると、桂の幼い喉がぐっと詰まった。
「たかすぎににているが・・・だがたかすぎはおれよりもチビのはずだ」
「誰がチビだァァァ!!!」
PR